最近は移動中に喫煙できる場所が減ってきています。たとえば自治体によっては、路上喫煙の禁止地区が設けられています。列車内では寝台列車を除き全面禁煙で、ホームやコンコースでも決められた場所で喫煙する必要があります。自家用車内での喫煙は法律で禁止されてはいませんが、周囲への配慮が必要です。この記事では、自家用車や公共交通機関で喫煙するときの注意点を解説します。さらに、周囲への迷惑をほとんど気にすることなく楽しめる、オーラルたばこや嗅ぎたばこについても紹介します。
自動車内での喫煙は、喫煙者にとってはくつろぎのひとときです。しかし周囲の人々に悪影響を与える恐れがあることを忘れてはいけません。車内で喫煙する際は、以下の注意点を頭に入れておくことが重要です。
日本では近年、各自治体による条例の制定により、路上喫煙が法的に禁止される地域が増えています。自家用車内での喫煙は路上喫煙に当たらないと考えている方は多いかもしれません。しかし、大阪府八尾市のように、窓を開けて車内での喫煙が路上喫煙に当たると明記している自治体もあります。また、明記がなくても、路上喫煙を禁止する条例の主旨が、周囲の環境に配慮し受動喫煙を防ぐことであることを考えれば、窓を開けて車内で喫煙する行為が条例違反とみなされる可能性があります。そのため、個人の乗用車内での喫煙でも、気にせずたばこが吸えるわけではなく、地域社会に配慮した適切な行動を取る必要があります。
車内での喫煙には「3次喫煙」という問題があります。これは、直接の喫煙や受動喫煙ではなく、3次的にたばこの有害物質にさらされてしまうことを指します。「サードハンド・スモーク」や「残留受動喫煙」とも呼ばれ、健康への影響が懸念されています。これは、たばこの煙が車内のシートなどに付着し、そこから有害物質が再び放出されることで発生します。特に非喫煙者が喫煙者の車に乗った際に、たばこの残留成分にさらされることで健康被害につながる恐れがあります。そのため、非喫煙者が同乗する可能性がある車内では、喫煙を控えるのが賢明です。たばこの有害物質による3次喫煙をさせないことが重要となります。
車内での車内で吸ったたばこの吸い殻をそのまま放置すると臭いの元になり、車内の衛生状態も悪化します。吸い殻から出る臭いが空気中に漂い、その臭いが車のシートや天井などにもこびりついてしまい、車内環境を損ないます。カー用品店では数々の車用灰皿が販売されています。使いやすい車用灰皿を用意し、適宜吸い殻を処理することで、過ごしやすい空間を維持しましょう。
消臭剤を活用しましょう。車内でたばこを吸うと、その直後は車内に臭いがこもります。この臭いを取り除くためには、消臭剤の利用が有効です。消臭剤には置き型とスプレータイプの2種類があります。
置き型の消臭剤は、小さな容器に活性炭やジェル状の物質が入っており、車内に置いておくだけで臭いを分解して消臭効果を発揮します。持続性があるので、1年以上効果が持続するものもあります。一方、スプレータイプの消臭剤は、車内のシートや空間に向けて都度スプレーして使用します。短時間で効果を発揮するので、喫煙直後などすぐに消臭したいときに効果的です。
車内のエアコンには「内気循環」と「外気導入」の2つのモードがあります。内気循環は車内の空気をフィルタリングして再循環させます。主にエアコンの温度や湿度の調整に使われますが、長時間使用すると車内の換気が不十分になります。一方、外気導入は外部から新鮮な空気を取り入れて車内に供給することで、車内の空気を清潔に保ちます。たばこを吸った際には、エアコンの設定を外気導入にして臭いを取り除きましょう。
車内でたばこを吸うとたばこの成分がシートに付着し、黄ばんだり臭いが取れなくなったりしてしまいます。喫煙者は、拭き掃除や布製品の天日干しなどを行い、こまめに車内清掃を行うことが肝心です。
車内にこびり付いた汚れは、水に湿らせて固く絞った雑巾やウエスなどで拭き取れます。ただし、汚れが蓄積されている場合には、水拭きだけでは汚れを落とすことが難しいことがあります。その場合は洗剤も使用しましょう。スプレーボトルで水を吹き付けて10分ほど放置し、汚れを浮き上がらせた後、車内専用のクリーナーで掃除をすると効果的です。また、晴れて天気の良い日にはドアやトランクなどを開けておき、天日干しにして風を通すとさらに効果的です。
定期的なエアコンフィルターの清掃や交換も忘れずに行いましょう。エアコンフィルターが汚れると、車内の空気が悪化し、臭いがこもりやすくなります。定期的に清掃や交換を行い、空気の質を良くするのがおすすめです。それでも臭いや汚れが気になる場合は、専門業者に依頼することも検討してみましょう。
車内でたばこを吸うときに誰にも迷惑をかけず、車内を汚したくないのであれば、嗅ぎたばこやオーラルたばこの使用も考えてみましょう。これらは煙を出さないため、紙巻たばこのような臭いや汚れの心配がほとんどありません。同乗者が非喫煙者であっても受動喫煙や3次喫煙させてしまう心配がありません。また、紙巻たばこと同様の刺激をハンズフリーで味わえるので、運転中でも利用できます。
通常の喫煙とは異なり、車内でたばこを吸うことにはいくつかの問題点があります。加熱たばこや電子たばこなどを利用する場合のデメリットと、嗅ぎたばこやオーラルたばこを使用した場合のメリットについて解説します。
加熱たばこや電子たばこでは、3次喫煙が発生する恐れがあります。喫煙者が吐き出す大量の呼気に含まれるたばこの成分がシートなどに付着し、その後車内に放出されるからです。
自動車内は家屋の室内と比較して、狭く密閉された空間です。そのため、車の天井や窓ガラス、シートなどに付着したたばこの成分が長時間残存しやすくなり、通常の喫煙よりもさらに3次喫煙のリスクが高いと考えられています。
また、臭いの問題も重要です。たばこの燃焼によって生じる臭いは、布などの表面に付着し、時間の経過とともに放出されます。そのため、車内がたばこの臭いでいつまでも充満してしまう恐れがあります。
一方、嗅ぎたばこやオーラルたばこでは、3次喫煙の心配はありません。
たばこの燃焼によって発生する微粒子や化学物質が車内の空気中に拡散し、エアコンフィルターやエバポレーターに付着します。これにより、エアコンを稼働させると車内にたばこの臭いが充満してしまうリスクがあります。エアコンフィルターを交換しない限り、臭いが付着したまま残ります。
同様に、車内喫煙によって、喫煙者や同乗者が着用している服や持ち物にも臭いが付着します。たばこの臭いの成分が服の表面に付着して繊維に絡みつくことで、長期間にわたって服が臭いを放つことがあります。1度の洗濯では臭いが落ちないこともあり、同乗者に迷惑をかけてしまいます。
加熱式たばこや電子たばこは臭いを抑えられているとはいえ、どうしても多少の臭いが付く場合があります。一方、嗅ぎたばこやオーラルたばこは臭いが発生しません。
喫煙車と禁煙車では、車の下取りや売却する際の査定額が異なります。喫煙車は、喫煙による汚れが残っていることが多く、価値が下がる要因となります。たばこで付いた焦げ跡やシミ、黄ばみなどが代表的な要因として挙げられます。
また、車内に充満するたばこの臭いも価格を下げてしまいます。特に喫煙者は自分ではたばこの臭いに気づかないケースが多いため、見落とされがちです。特にエアコンやシート、フロアマットなどは臭いが残りやすいパーツです。
最近はたばこを吸う人が減っているため、中古車市場では喫煙車よりも禁煙車の方が需要が高くなっています。また、中古車販売業者が喫煙車を購入する際に、汚れや臭いを取るための追加費用を査定額に反映する場合もあります。こまめな清掃や換気、消臭剤の使用などである程度汚れや臭いを抑えることはできますが、完全に消臭できるとまではいかない場合もあります。なるべく車の査定額を下げたくないなら、通常のたばこから嗅ぎたばこやオーラルたばこへの切り替えをおすすめします。
2018年7月、健康増進法の改正による法律が成立し、2020年4月1日から全面施行されました。この法改正は、受動喫煙の深刻な健康被害が社会問題として広く認知されたことが背景にあります。受動喫煙は、特に閉鎖された空間での喫煙によって、一般の人々の健康にリスクをもたらします。そのため、公共交通機関をはじめとする施設では、「原則屋内禁煙」が導入されました。
健康増進法の一部改正により、鉄道車両内は原則禁煙となりました。従来、一部の列車では技術的基準を満たす場合に喫煙ルームを設けることが認められていましたが、2024年3月には東海道、山陽、九州新幹線の車内喫煙ルームが廃止され、さらに同月、近畿日本鉄道も特急列車の喫煙室を廃止しました。これにより、私鉄の喫煙ルームは全て廃止され、喫煙が認められる列車は極めて限られています。
これらの喫煙ルームの廃止には複合的な理由が存在します。まず、喫煙者の数が減少し、喫煙ルームへのニーズが低下していることが挙げられます。また、新幹線などの列車では限られた時間内に効率的な清掃が求められるため、喫煙ルームの清掃作業はコストと時間の面で負担が大きいことも理由です。さらに、清掃スタッフが受動喫煙のリスクにさらされる恐れも考慮されました。これらの理由から、鉄道車両内での喫煙はほぼできない状態となりました。
改正された健康増進法では、主に屋内での受動喫煙の被害を防止することが焦点とされています。しかし、「喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」(健康増進法第27条第1項)との規定も含まれており、屋外でも周囲に配慮してたばこを吸うことが求められます。
さらに、全国の自治体では路上喫煙を禁止する条例が制定されています。これらの条例は、路上での喫煙やたばこのポイ捨て、歩きたばこなどの行為を禁止し、違反者には1,000円から2,000円程度の過料が科せられることがあります。このような規制が制定された背景には、路上喫煙による受動喫煙の問題や、たばこのポイ捨てによる環境破壊が社会問題として認識されたことが挙げられます。
喫煙場所が減るなかで、嗅ぎたばこやオーラルたばこを選択するのは、有効な対策のひとつです。煙や臭いを出さないため、自家用車内だけでなく、公共交通機関の車内など、様々な場所で周囲に迷惑をかけることなく喫煙を楽しめます。また、たばこの刺激は通常のたばことほとんど変わりありません。日頃喫煙されていてまだ試したことがない方は、ぜひ一度試してみてください。
自動車内での喫煙は、同乗者への配慮や定期的な清掃が重要です。車内の臭いや汚れを放っておくと、車の価値が下がる恐れがあります。しかし、煙の出ない嗅ぎたばこやオーラルたばこは3次喫煙の心配がなく、非喫煙者にも迷惑をかけません。喫煙場所が減少する傾向にあるなかで、嗅ぎたばこやオーラルたばこは喫煙者にとってこれからも喫煙を楽しめる良い選択肢となります。